内藤ルネのすべて

「ルーツ of Kawaii」内藤ルネ

内藤ルネは、その独特な感性と多彩な才能で、今や世界中に広がる日本独自の「Kawaii」文化の原型をつくったアーティストです。今から約半世紀も前に「デフォルメした大きな目」「小顔にヒョロ長いプロポーション」の女の子を初めて描き、パンダブームより先にパンダを初めてキャラクター化し、ファンシーグッズという言葉さえなかった時代に多くのグッズを生み出すなど、ルネの作品は当時の少女たちの心をつかみ、瞬く間に多くの人に広がっていきました。そして、それまで“幼稚”や“ちっぽけな”というややネガティブな意味であった「カワイイ」という言葉を、可憐でキュートなイメージに変え、“生活の中にファンタジックな夢を”と願いを込めて、あらゆる身近なものを「カワイイ」と表現し、私たちに具現化して見せてくれたのです。かつて手塚治虫が誰も想像していない遠い未来や宇宙やロボットを私たちに見せてくれたように、ドラえもんが私たちをワクワクさせてくれたように、内藤ルネは、私たちに「カワイイ」という感動と夢に気づかせてくれたのです。

 
イラストレーター、人形作家、デザイナー、エッセイスト……。1950~1960年代にかけて、圧倒的な人気のファッション誌『ジュニアそれいゆ』の表紙と挿絵を担当し、大ブレイク。ヴィヴィッドに彩られたキッチュな少女画で古い美少女観をひっくり返し、動物から野菜、フルーツ、そして捨てられていた家具まで、それまで誰もが見過ごしていた“カワイイの芽”をイラスト以外にも家具や食器、ルームアクセサリー等あらゆるものの中に次々と見出し、命を吹き込み、人々に発信し続けました。彼の残した作品は、1万点以上にも及びます。内藤ルネは時代も性別も超えて乙女ゴコロを魅了するマルチ・クリエーターにして「カワイイ文化の祖」と言われています。